嫌な気持ちを整理する~ABC理論~

この記事は約5分で読めます。

職業訓練校に来られる生徒さんの中には、訓練についてや就職活動について様々な悩みを持った方がいます。

例えば、

  • 前職でパワハラなどを受けて働くことに自信を無くしてる人
  • 「訓練校の講義についていけない、私はダメな人間。。」と自分の能力を悲観する人
  • 「職場の人と合わず、転職回数が多い。長く働ける職場を探したい。」と、人間関係構築に悩まれ、職場定着の難しさを感じている人

などなど。

そこで、この嫌な気持ちを整理するのに役立つのが、ABC理論です。

ABC理論

ABC理論とは、アルバート・エリス(Albert Ellis)が1955年に提唱した「論理療法」の中心概念です。

私たちが悲惨な感情行動に苦しむ原因を分かりやすく示したモデルです。

具体的には、

  • 「A(出来事)そのものが、C(心理的な結果)に結び付く」という考えを否定して、
  • 「A(出来事)が起きて、それをB(受け取り・捉え方、感じ方)し、結果的にC(心理的な結果)に結び付く」としました。

人が感じる心理的な問題は、「何が起きたか」ではなく、「それをどのように解釈したか」によって起こりうるものである、とする考えです。

例えば、 上図のケイさんとユイさん。2人は入社して3か月目の新入社員です。2人とも仕事が覚えられず、仕事が出来ないことに悩んでいました。

仕事が出来ないという出来事(A)に対して、

ケイさんの考え方は、「仕事ができない=自分はダメな人間だ。」と捉えており、仕事と人柄を分けて考えておらず、論理的でない考え方をしています。

その結果、さらにストレスを抱えたり、落ち込むことになってしまいます。

一方、ユイさんの考え方は、

「仕事ができない=まだ仕事に慣れていないだけ」と捉え、以前よりは気持ちがラクになりました。そして、より積極的に先輩の力を借りる等して、前向きに仕事に取り組むようになりました。

冷静になれば、ユイさんの考えが出来ることがありますが、

人はショッキングなことが起きると、視野が狭くなり、ついついケイさんのような論理的でない思考に陥りやすくなります。

論理的でない考え方の例

論理的でない考え方の種類としては、いくつかあります。

・避難・卑下(ひげ):人や自分を非難したり、ダメな人間だと思い込むこと。

例えば、先ほどのケイさんのように、事柄と人柄を分けずに「仕事が出来ない=自分はダメな人間」と考えてしまうこと。

・欲求不満低耐性(がまんできない):「我慢できない」「耐えられない」と思い込む。

例えば、失恋したら、恋愛そのもとをやめちゃうなど。他にも、嫌いな人と同じチームになってしまい、我慢できないと思って会社自体を辞めるなどです。

・非難:相手を非難すること。

例えば、仕事でミスをした人に対して「あの人は仕事ができない」と決めつけるなど。先ほどの例では、「ケイさんは仕事ができない」と決めつけることです。今の仕事は出来なくても、他の仕事は出来るかもしれない。にもかかわらず、ケイさんは仕事全般できないと決めつけることです。

・ねばならない:「絶対に○○でなければならない(すべき)!」という強い思い込みの場合です。

例えば、「彼は私を公平に扱わなければならない。」等です。

無意識に上記のような考えに陥ってしまいますが、それは今までの経験や価値観から来ているため、簡単にはその考え方(物事の捉え方)を変えることは出来ません。そのため、変えようと思うなら、何度も訓練が必要です。

では、どのようにユイさんのような前向きな考え方が出来るようになるのか。

ABCDE理論

望まぬ結果(C)にならない様に、出来事(A)に対してのどのように捉え方(B)を変えるのか。それがABCDE理論で、先程のABC理論にDとEが加わったものになります。

まず、Dは「反論(Disputing)」の頭文字です。

つまり、「捉え方・感じ方(B)」が不合理、つまりネガティブに捉えてしまう際に、「反論(D)」を繰り返す事で新たな考えや感情を得る事が出来る事で「結果(C)」が変わります。

この変わった結果の事を「効果(Effect)」と呼ぶます。

反論(D)とは、

「そのB(捉え方)は本当?」「どんな証拠があるの?」「そのB(捉え方)を持ってると役に立つの?」と、ひたすら問いかけることです。

ケイさんの例では、「自分はダメな人間だ」に対して、「別のことは出来てたよ。それはダメなことではない」と反論していきます。そうすることで、ユイさんのような良い効果(E)に変化するはずです。

前述したように、捉え方(B)は、今までの経験や価値観からくるものなので、簡単に変わりませんが、続けて訓練していくうちに、自然と反論(D)の考えが出来るようになります。

また、頭では分かっているけど「やっぱりあの出来事(A)は不愉快だ。」と、気持ちが追い付かないこともあるでしょう。

その時は、この不愉快というのは、気持ちとして得か損か?→もし損であるならば、誰が損をするのか?→自分だけが損をするような感情を続けたいか?…と、ぜひ冷静に対応できるようにトレーニングしていきましょう。

好まない結果(C)である場合は、出来事(A)に対する捉え方(B)に対して、ぜひ反論(D)をしてみて下さい。必ず、よい効果(E)が出るはずです。

まとめ

ABC理論を使って冷静に考えられるようになると、

例えば、「仕事が遅い」と言われて落ち込んでいたが、よくよく考えると、教えて貰うという姿勢でいて、自分から進んで学ぶ意識が低かったな。と思えたり、

「君には可能性を感じられない」と言われてショックだったが、言われたのはその人一人だけだな、他の人からは言われたことないな。気にしなくてよいかも。と思えたりします。

辛い経験も、このように自分の成長の糧に出来るようになります。

そして、ABC理論はネガティブ感情を無理くりポジティブ感情に変えて行きましょうというものではなく、「出来事」には多面的な捉え方があるよということを伝えたいのだと考えています。

嫌な気持ち(C)も、捉え方(B)を冷静に反論(D)していくことで、自分の糧として良い効果(E)を生んでいくでしょう^^

コメント

タイトルとURLをコピーしました